【銚電の】銚子電鉄乗車記念切符 潮風からの誘惑【黒歴史】

今回の切符これくしょんでは、銚子電鉄黒歴史とも言うべき乗車券を紹介したいと思います。

銚子電鉄は1990年1月に経営が千葉交通からU工務店という、クッソぁゃしぃ会社の傘下になり、それと同時にU工務店へ駅舎の改装が発注されました。これにより銚子駅がオランダ風、観音駅がスイス風、君ヶ浜駅がイタリア風、犬吠駅ポルトガル風になり、現在はその残骸とも言うべき老朽化した駅舎が無残な姿を晒しています。また電車もそれまでの西武赤電色の近似色から、臙脂と茶色のレトロ調塗装へ変化し、前面や側面には、当時の社長・U氏をモチーフにしたゴリラ「アル・カッポレ」のマークが貼られました。

今回紹介する乗車券は、このようなU氏主導によるタダのローカル電鉄から観光鉄道へ脱却の一環として発券されたもので、蓋を開ければ今となっては苦い黒歴史を感じられる一品です(笑)

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この乗車券は1000形の写真が使われていることから平成5年以降の発行されたものと思いますが、ところどころにバブル期の残り香を感じることのできるデザインになっています。

表面の写真に使われている800形の写真ですが、前面に車番が入っていないのと運転席側の窓がHゴム化されていないので、塗装変更してからそんなに経っていない頃のものと考えられます。

裏面には、当時導入されたばかりの営団2000系改め1000形の写真が使われていますが、裏を返せば老朽車の置き換えに他の電鉄(日立電鉄)の発注流れ車を引き取ってきた「訳あり車両」だったりします。

 

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パカっと開けると1000形の写真の横に乗車券が出てくるのと、銚子の観光名所の写真が出てきます。

乗車券は全線の往復と、銚子から笠上黒生までの往復の4枚組になっていますが、この乗車券を買ってからまずは全線乗って次いでポートタワー最寄りの笠上黒生まで乗ってね…といった感じなのでしょうか。

 

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乗車券を全て展開した状態ではスキャンできなかったので、上下に分けてスキャンしました。

上半分を開けると、当時の観光案内やU氏肝いりの改装された駅舎の写真が使われ、1000形と700形の紹介が載っています。

この700形701号ですが、1994年にテレビ番組の企画でこの塗装へ変更されたとのことですが、翌年に笠上黒生駅付近でよりによって1000形と衝突事故を起こしてしまったため、速攻でお蔵入りしてしまったのだそうです。なおWikipe先生によると、701号車はこの事故の影響で台枠が歪んだまま現在に至ってるとのことで、銚子電鉄の現場やポッポの丘でメンテナンスに当たっている方々の苦労を感じます…。

下半分を開けると、1000形の走行音やよくわからない作詞家と作曲家によって作られたオリジナルソングが収録されている8㎝CDが出てきます。走行音は点検蓋の上にマイクを置いたわけでもなく、車内のどこかへ適当にマイクを置いて録られたと思しい音なのでモータの音は雑音にかき消されていますが、営団車特有のトロンボーンホーンを思い切り吹鳴している音はしっかりと入っているので、地下鉄ヲタは聞いて損はないかと思います。

また1000形入線によってマトモに動いていなかったらしい500形や、小型電気機関車デキ3、そして諸悪の根源「アル・カッポレ」の紹介があります。

 

この乗車券の発行された年(推定)から5年後の1998年にU工務店は自己破産、その後銚子電鉄はU氏の同族経営状態に移り、それをいいことにU氏が会社名義で個人的な借金を重ねた結果、「電車の修理代を稼がなくちゃいけないんです」な事態へ悪化してしまったことは有名なお話です。

現在も苦しい状況に立たされている中で、「まずい棒」や「鯖威張る弁当」などの自虐ネタを盛り込んだ面白い商品で頑張っている銚子電鉄ですが、これからもこの黒歴史を払拭する勢いで、地元の足としてずっと走り続けて欲しいものですね。