長野電鉄8500系に余命宣告か…!

本日、信濃毎日新聞から『長電の普通電車、省電力型に 28年度までに「3000系」などに置き換え方針』という見出しで、これからの長野電鉄の車両の動向に関するニュースが出ました。

この記事によれば、現在長電に在籍する各停用車両を3000系などの省エネ車両へ置き換えることを2028年度までに行うものとし、そのために八十二銀行の融資商品を用いて1億5000万円を調達したとのことでした。

 

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須坂駅構内における3000系

 

記事全文を読むと、現在在籍する車両45両のうち省電力車両を73%に高めると出ていたので、この数字を元にちょっと計算してみました。

しかしこの数字、現在の在籍数である45両にかけても中途半端な値が出ることが問題となっています。そこで3500系が3000系に置き換えられた後の在籍数である47両にかけてみます。

すると「省電力車両」の在籍は約34両となり、そこから3000系に当たる数を除くと約19両という値が出ました。これは記事の見出しと合わせて考えると、近い数の18両が在籍する8500系が置き換えの対象となっていると見て間違いはないかと思います。

このことから長電としては、8500系を淘汰して新たなインバータ制御車へと更新し、各停用車両の省エネ化および合理化を図りたいものと考えます。

 

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置き換え対象と考えられる8500系T1編成

 

長電8500系は2005年から2009年にかけて東急8500系を譲受したもので、長電初の界磁チョッパ制御車*1として長野線の長野~信州中野間で大活躍しています。

繰り返しになりますが、この車両の制御装置は界磁チョッパ制御であるため、このことが車両の寿命の足枷になっているものと考えます。

というのもチョッパ制御は我国の電車史においては、抵抗制御とインバータ制御に挟まれた技術の発展途上における一時的なものでしかなく、そのせいで現在は生産中止に追い込まれた部品が多数あることで、維持が難しくなってきているからです。

東急においても8000系列で用いられている主電動機のブラシが製造中止になり入手難になってたことから、廃車から使える部品を回収してまで維持していたとのことで、いずれこの体制に限界が来るのは明らかです。同じ県内のアルピコ交通も3000系の代替に20000系を導入していますが、これも車両自体の老朽化のみならず、チョッパ制御の部品枯渇に対する問題を、置き換えによって解決することを考えているのでしょう。

長電においては界磁チョッパ制御車たる8500系の淘汰が行なわれることによって、各停用車両をVVVFインバータ、特急用車両を抵抗制御および界磁添加励磁制御とほぼ2種類の制御装置へ統一できる*2ため、保守整備の合理化にもある程度は寄与するものと考えます。

 

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さて、この度8500系が置き換えられるとなると、気になるのは代替で入線する車両になるかと思います。

ネットを見ると205系や東海の211/213系だったり行徳に放置されている某西武系電鉄会社がキャンセルした03系だったりといった意見が出てますが、走ルンですは先の置き換えリリースなどと併せて東急9000系が来るのではないか、と予想します。

今回導入するのは「省電力車両」であり、長電としては交流電動機を用いてインバータ制御車を望んでいるものと考えます。そのため直流電動機を用いた界磁添加励磁制御205系や211/213系はまず候補から外れると考えます。なお東海の211/213系は冷房の電源にDC/DCコンバータを用いているとのことですが、長電においても3500系入線時の改造の際に新設しているので、一応取扱いに関する経験はあるということを付記しておきます。

 

そして03系ですが、行徳に留置されているものは長電に譲渡されたものとは異なる後期車であり、仕様が微妙に異なるうえ、33Fの先頭車が解体されたので中途半端な数しか確保できません。そのため在来車の仕様とは異なる中途半端な車両を中途半端な数だけ導入する……というのは、ちょっとあり得ないようにも思います。恐らく前期車の部品も必要なもの以外はほぼほぼ処分していることが考えられるので、仕様の統一も難しいものと考えます。

また3000系は入線にあたってCT2車をCM2車への改造を始め、かなりの大改造を受けているように見受けられます。そのため今回の融資で調達した1億5000万円で果たしてあれだけの改造ができるのか…という点も気になるところではあります。

 

最後に東急9000系ですが、過去にこどもの国線において1M2Tの3連での運転実績があるため、簡単に編成を短縮することが可能です。それだと冗長性や加速度の問題がありますが、純粋に8500系の代替として長野~信州中野間の専用で運用するのであれば、1Mでもそこまで問題にはならないものと考えます。そのため元々そのような運用が可能であることから、改造費が安価に抑えられることが考えられます。

またGTO-VVVFであっても廃車に伴う予備部品が多く出てくることや、同じ県内の上田電鉄が共通部品の多い1000系や6000系を運用しているから情報の共有ができることなどから、維持にはそこまで困難はなさそうに思えます。そもそも中古車である以上、余程のことがない限り25年以上使用されることはないため、GTO-VVVFであっても所詮は部品が尽きる頃には置き換えられる…と考えれば、さほど問題はなさそうに思えます*3

以上より短編成での運転が可能で改造費が安価に抑えられることが考えられることや、部品や情報の確保が出来ることなどから、8500系の代替は同じ東急の9000系になるのでは…と考えるのです。

東急9000系も今年の1月に発表されたプレスリリースから、近々の置き換えが予定されており、それに伴い必要な車両や部品等の確保が容易に出来るという点も大きく作用するものと考えます。

 

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また電車の話題ばかりで誰も触れていませんが、元の記事では長電バスについても触れられており、ハイブリッド車や電気車を6%から15%へ引き上げる旨が書かれています。

現在、長電バスに在籍するこれらの「エコカー」は、2007年から2010年にかけて導入されたブルーリボンシティハイブリッド(いわゆるブルシチ)が11両だけであり、記事を元に計算するとあと約17両は増備する予定があるとのことです。

恐らくは日野のブルーリボンハイブリッドや、中国製電気バスなどが導入されるものと考えますが、これによって現在在籍している特徴的な移籍車や在来車が淘汰されてしまうものと考えます。特に柳原に残存するKC-規制の移籍車や、車齢が20年を突破するKK-規制の自社発注したレインボーRJなどが置き換えられてしまうことでしょう。現在のバリエーション豊富な顔ぶれも見納めになりかねないので、バスの記録も早めに行いたいものですね。

 

以上、ニュースから個人的に感じたことや思ったことのまとめでした。省エネ車両を導入する鉄道に、エコカーを導入するバスを併せて、今後の長電の動向からは目が離せなさそうで楽しみですね。

*1:長野県下初の界磁チョッパ制御車は国鉄591系、営業用ではアルピコ交通3000系である

*2:ただしメーカーはバラバラであるほか、新たな車両と併せて駆動装置など他の走り装置は統一がなされていないままである

*3:なお過去に東急1000系を導入した事業者は、いずれもGTO-VVVFのまま継続して使用していることから、つまりはそういうことなのだろう