長電「アカガエル」の形態差

トノサマガエル~ アマガエル~ カエルにいろいろあるけれど~、とまぁ長野電鉄で活躍していたカエルこと東急旧5000系は、国鉄電車と同じ赤2号とクリーム4号の2色塗から「アカガエル」と呼ばれて親しまれていました。

長野電鉄長野線長野駅~善光寺下駅が地下化するにあたり、地下線に入れない半鋼製車の置き換え用として、ながの東急百貨店の後押しで東急に譲ってほしいと泣きついて、更新修繕レベルの大改造*1を施したにも関わらず、後輩のクジラや8500系ほど長くは活躍できなかった悲しい電車でもあります*2

そんなアカガエルですが、模型としてはポリバケツマイクロエースが3連の2600系赤い電車がan-railブランドで2連の2500系がリリースされています。前者は特定の編成が製品化されているため、おおむね実車に従った仕様ですが、後者は他の会社へ譲渡されたカエルと共通の金型であるため、実車に近付けようとすると製品付属のC2編成の車番が使えなくなるのです。

…といわれても、何も分からない方にとっては何を言っているのか分からないと思うので、ここでアカガエルの大まかな形態差についてまとめたのを披露したいと思います。

まずは2連を組む2500系(C編成)です。

 

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C編成は、C1編成からC10編成までの10本が在籍していました*3。このうち5本は下り方(湯田中方)にクハ5150形を連結する純粋なクハ+モハの編成ですが、残りの5本は下り方のデハ5000形を電装解除したうえでクハとしています*4

こうして見ると、新製時からのペアで譲渡されているのは3本しかおらず、他の編成は新製時とは異なる車両とペアを組んでいるため、モハとクハで製造年月日や形態が異なるものがあります。鉄道車両のメンテナンスをしている友人から聞いた話では、鉄道車両は同じ形式であっても、当然ながら製造年次によって細部が異なるそうです。そのため、長電入りに当たって施工された改造工事で、形態はある程度統一されているものの、同じ編成に異なる製造年月日の車両(=細部が異なる車両)が存在することで、整備に支障が出ていたということが、もしかするとあったのかもしれません。表をご覧いただくとわかりますが、モハとクハとで戸袋サッシ色やドア窓の大きさが異なる編成は、窓の開閉機構も異なっていたらしく、我国では黎明期の軽量電車だけに整備する側は結構大変だったと思います。

以上を踏まえて話を模型に移すと、赤い電車のan-railで発売された形態に当てはまるものは、C1、C10、C3、C6、C9の5本で、うちC1とC10は前面の赤塗装の面積が大きい塗装になります。よって、それ以外の編成を再現する場合、生産数が少なかったクリームの面積が大きい編成のセットを購入したうえで、クハだけ、あるいはモハ+クハ共にドア窓を大きくしなければなりません。

 

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続いて3連を組む2600系(T編成)です。

T編成はT1編成からT3編成までの3本が在籍していました*5。こちらはC編成ほどバラバラに組成されておらず、T2編成に至っては全ての車両が同じ製造年月日の車両で揃っていた(=恐らく新製から廃車まで全く同じ車両で組成されていたと考えられる)のが特徴です。そのため、戸袋サッシ色やドア窓の大きさがバラバラな編成は1本もおらず、外観は全ての車両で統一されています。また前面の赤塗装の面積が大きいのはT2編成とT3編成だけなので、ドア窓が小さい車両(T1編成)がそのような塗装になることはありませんでした。

T編成はT1編成を除いてかなり遅い時期に入線したため、T3編成に至っては長野で12年ほどしか活躍できませんでした。ただし後継の3500系も一部が路線廃止に伴う運用減の影響により、10年程度で離脱しているもの*6がおりますが、それ以外は現在に至るまで20年近く現役で活躍していることを考えると、セミステンレス車体でも扱い慣れた三菱製WNドライブの方が相性が良かったという証左になるでしょう。もしも現在に至るまで長電が路線の廃止や運用の縮小をしていないのであれば、現状よりもっと多くの3500系が現役であったと思います。

 

以上、ここまでササッとまとめてみましたが、最後にアカガエルの形態に関する基本的なことを書いて終わりにしたいと思います。2連のC編成はOSカー同様、クハが湯田中方を向くように組成され、4連を組む時は湯田中方に編成番号が偶数、長野方に編成番号が奇数の編成が来るように組成されます。列車無線アンテナは、湯田中方に逆L形アンテナ、長野方に大小それぞれのIRアンテナが付きます。逆L形アンテナはC編成とT編成で取り付け位置が異なり、C編成は運転席の真上、T編成は車体中央になります。

 

長野電鉄をはじめとした信州地方の電車のまとめ記事は、これからも気が向いたら適当に書いていきますので、またの機会をお楽しみに。

*1:車内外の不燃化、耐寒耐雪化、シャコタン化、運転室の拡大、前面の強化、尾灯と警笛の移設ほか多数

*2:実際に長電の社長もRP誌のインタビューにて、思っていたより長くは使えなかった(意訳)とコメントしている

*3:当初計画では7本を導入する予定であった

*4:書類上はクハ5150形にしたうえで譲渡されているらしい

*5:当初計画では4本を導入する予定であった

*6:N1(種車の代替後)、N2、O3、O4の4本