先日親子向けの公開イベントでクモハ12052号が展示されたことで話題になった東京総合車両センターですが、過去の公開で撮影した保存車や保留車の画像が出てきたのでお目にかけたいと思います。
そもそも東京総合車両センターとは何なのか?という方に軽く説明しますと、1915年に大井工場として国電の修理・改造を受け持つ鉄道工場として発足した西エリアと、1967年に品川電車区(シナ区)として発足した東エリアから成るJR東日本の車両基地で、発足時より首都圏を走る通勤型電車の検査を一手に引き受けていると共に、山手線電車の車両基地として現在に至ります。
ここにはかつてより歴史的な車両がいくつか保存(または保管)されていたのですが、そのほとんどが老朽化ということから解体されてしまい、現在は限られた車両のみが残されています。
正門付近には901系クハ901-1号車が保存されています。
発足間もないJR東日本における次世代の電車の試作車として、事前に行ったコンペの結果を元に川崎車輌や東急車輛*1で10連3本が製造されたもので、このクハ901-1号車は川崎車輌製のものです。のちに量産化改造を受けた際に209系へと編入され、209系900番代*2になりました。
その後量産車として登場した209系とは、スカートの形状やラジオアンテナの位置など細部が異なります。
これら209系の試作車は2007年ごろに、三鷹区から転属した209系500番代へと置き換えられて廃車となりました。
妻面はこのようになっています。
川崎車両製の走ルンですに特有のビートのある妻板に、ラジオアンテナの位置が独特ですね。
所属表記は東京支社時代の浦和電車区*3のものになっています。
こちらは保留車として残されているクモハ12形のクモハ12052号車です。
先述の通り、先日開催されたイベントにおいては修繕中の様子が披露されておりました。
元は1929年に造られた31系電車のモハ31018号車で、戦後の形式改定でクモハ11形クモハ11210号車となり、1958年に鶴見線用に両運転台化改造が行われて現在のクモハ12形クモハ12052号車となりました。
保留車ということで2022年1月現在も車籍を抹消されることなく有しており、制動装置の安全基準を満たしていないことや、下手に動かすと電装品の劣化に起因する起電停止→本線への支障などが考えられること*4から自走は叶いませんが、現在も姿を留める戦前型の17m国電として貴重な存在です。
2017年の公開では南武線の前サボを掲出した状態で展示されておりました。
個人的には華やかだった頃の山手線や京浜東北線などのサボでも良かったのでは…と思いました。
そして最後にEF58形電気機関車のEF58 61号機です。
2018年の公開で展示されていたので、とりあえず見に行ったものの同時に展示されていた209系500番代のみマトモに撮っていたので、機関車の写真はこれしかありません()
このEF58 61号機は言わずと知れたお召列車専用の機関車として製造されたもので、現在も敷地内の御料車庫内で保管されております。
台枠の損傷から、こちらも列車を牽引しての走行や自走は叶わないものの、構内でのちょっとした移動は問題ないみたいですね。
なお御料車庫にはEF58 61号機のほかに、次の車両が保留車として保管されています。
157系クロ157-1号車
1号御料車(3代目)
2号御料車(2代目)
旧3号御料車(2代目)
13号御料車
14号御料車
供奉車460号+340号+330号+461号
賢所乗御車
一説によると、これらの車両はJRのものか宮内庁のものか線引きが曖昧であるため、処遇未定の保留車として保管されているらしいです。いずれも貴重な車両であることには変わらないので、然るべきところで保存して欲しいところですが、しばらくは車庫に収められたままでしょう。
またこれらの他に、かつては次の車両*5も保管されていました。
クモハ12形クモハ12053号車
クモニ13形クモニ13007号車
クモヤ90形クモヤ90801号車
クモハ12形は鶴見線、クモニ13形は東京総合車両センター、クモヤ90形は長野総合車両センターにて使用されていたもので、いずれも保存を前提に保管されていたものらしいです。このうちクモヤ90形は63/73系への復元を前提とした保管だったらしいのですが、側面の一部を除いて解体された旨は、過去の鉄道博物館の記事で紹介した通りです。
貴重な車両を残していても維持管理の限界から解体される例が最近話題となりましたが、これらも同様の理由から解体されてしまいました。JR東日本では様々な車両センター内に鉄道博物館の収蔵候補から漏れた車両や歴史的な車両を保管していますが、それらが今後どうなるのか……昨今の様々な事情からちょっと気になってしまいますね。